障害基礎年金を受給しているひとり親の方へ~児童扶養手当の改正~

厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、ひとり親世帯は約142万世帯と、年々増加傾向にあります。昭和63年から平成23年の25年間で 母子世帯は1.5倍、父子世帯は1.3倍 (母子世帯84.9万世帯→123.8万世帯、父子世帯17.3万世帯→22.3万世帯)という状況です。ひとり親世帯の厳しい経済状況に鑑み、今回、児童扶養手当が改正されました。

児童扶養手当受給者は、約97万人(29年度の厚労省の福祉行政報告より)となっています。ひとり親世帯数との差が明らかで、制度の要件に当てはまらないからなのかアクセスできていないからなのか不明ですが、児童扶養手当に限らず、行政制度の申請主義、また受理するまでのハードルの高さに起因しているのではないかといつも考えさせられます。

大切なのは、「まずは、知ること」

行政から何らかの給付を受ける場合は、必要書類、算定、認定要件も煩雑であり、窓口申請とされているものも多いので、

「もしかしたら該当するかも?!」と思ったら、すぐに自分の住む自治体の窓口に相談に行きましょう!

常日頃しっかりとアンテナを張り、自分が受けられる社会保障の情報をキャッチして欲しいと思います。

今回は、「障害基礎年金を受給しているひとり親の方への情報です。」

障害基礎年金を受給しているひとり親の方の児童扶養手当について、制度改正されました。

障害基礎年金を受給されているひとり親の方で、これまで児童扶養手当が受給できなかった方が、今回の見直しにより受給できる可能性があります。該当される方は是非内容を確認してください。

【改正内容】

児童扶養手当は、前年の所得金額と子の人数により手当の金額は決定されます。

今回の改正は、

①児童扶養手当の支給金額の算定方法の変更

②支給制限に関する所得の範囲の変更

になります。

①児童扶養手当の支給金額の算定方法が変わります。

障害基礎年金は、障害の等級に応じた年金額と、18歳までの子を扶養している場合には、子の加算額も受け取ることができます。

これまでは、障害年金を受給しているひとり親の方は、障害基礎年金の金額と子の加算額を合わせた額が児童扶養手当月額を上回る場合には、児童扶養手当は支給されませんでした。

今回の改正により、障害基礎年金の金額は含めずに、子の加算部分の月額が児童扶養手当月額より低い場合は、児童扶養手当の月額と、子の加算額の差額が支給されることになります。

                      図は厚労省HP資料より抜粋

②支給制限に関する所得の算定範囲が変わります。

これまでの所得の算定では、課税所得のみでしたが、障害基礎年金等を受給されている方については非課税の公的年金給付等も含まれるようになります。

具体的には、遺族年金、障害年金、労働者災害補償保険法による労災年金などの公的年金、労働基準法による遺族補償が含まれるようになります。

上記2点を、流れに沿ってもう少し詳しく説明していきましょう。

①児童扶養手当を受給できるかどうかを確認しましょう。

児童扶養手当は、前年の所得金額と子の人数により、全部支給、一部支給、支給停止となります。

※ここでいう所得とは、収入から必要経費(給与所得控除等)の控除を行い、養育費の8割相当を加算した額です。

☆前年度の所得額を計算してみましょう。

※障害年金を受給されている場合は、今回の改正で非課税所得も含めて計算することになりました。

合計所得金額―8万円(社会保険料相当)+養育費の8割

全ての所得の合計から社会保険料相当を引き、養育費の8割相当を加算した額となります。

所得とは、収入から必要経費(給与所得控除等)の控除を行ったものです。

・給与所得(給与の収入から給与所得控除額を引きます)

・公的年金所得等(公的年金の収入額から公的年金控除額を引きます)

・その他(収入から必要経費を引きます)

※下図では、参考の為、給与所得に給与所得控除額等を加えて表示した額を収入ベースとして表示されています。

POINT!
該当する扶養人数の所得制限限度額未満であるかを下の表で確認します。

赤い枠の所得制限額未満の場合は、児童扶養手当が支給されます。→行政窓口へ相談に行きましょう。


 

②児童扶養手当の金額を計算しましょう。

●前年度の所得が、黄色い枠の数字未満であれば、全部支給されます。

手当の基準額(令和2年4月1日)

●前年度の所得が、黄色い枠の数字以上赤い枠の数字未満であれば、一部支給されます。

例えば子供を一人扶養している場合…

43,160円(全部支給額)-〔(受給資格者の所得額―所得制限限度額87万円(全部支給所得ベース)×0.00230559+10円)

③児童扶養手当の支給額を計算しましょう。

【申請時期】

令和3年3月分より、障害基礎年金を受給されているひとり親の所得の計算方法が変更されます。各自治体への3月前の事前申請は可能であり、令和3年6月30日までに申請すれば、令和3年3月分の手当から受給できます。

これまで障害年金を受給しており、就労が困難な為給与所得等がないような方は、児童扶養手当を受給できるようになります。難しい計算や条件の判定は、行政の担当者の方にお任せして、まずは行政窓口に相談へ行ってみましょう!

執筆:サポート会員 植平由美子(CFP)