20歳からの年金基礎知識その2

Q.質問 20歳になったら年金の加入義務のあることは分かっていますが、学生でアルバイトの収入も少なく保険料の支払いができません。この場合どうしたらよいのでしょうか。

A.回答 学生納付特例制度が利用できます。

学生納付特例制度を詳しくみていきましょう。

参考WEBページ

https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/seido-shikumi.files/LN15.pdf

(日本年金機構 学生納付特例制度のポイント)

学生納付特例制度とは

所得要件を満たした学生を対象に、国民年金保険料の納付が猶予される制度です。

【所得要件】 所得 128万円+扶養親族等の数×38万円 以下の人

独身で、アルバイト収入のみ学生であれば収入の目安は128万円以下となります。対象者は、大学(院)、短大や専門学校等に在籍する学生等となります。

手続きの方法

役所、年金事務所の窓口で申請書を入手し提出します。日本年金機構HPでも入手可能https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kokunen/kokunen.files/23.pdf

学校等へも申請書の提出ができる場合もあります。申請書提出後、「承認通知書」が届けば納付が猶予されます。(承認期間は、誕生月からその年度の3月まで)

承認されると、年金の受給資格期間に算入されますが、年金額には反映されません。年金額に反映されないという事は、年金加入期間に保険料を全額納付した人に比べ、将来受け取れる年金が少なくなります。

届け出をせず放置して「未納」の状態ですと、老後の年金の受給資格期間への参入がされない上に、事故等で障害になった際の障害年金受給も影響が出ます。(未納と学生納付特例制度との違いは以下の表を参照)

(日本年金機構 学生納付特例制度のポイントより抜粋)
  • どれくらい年金額が少なくなるの?

・老齢基礎年金 年金満額 780,900円 (令和3年度)

20歳から60歳まで40年間全額保険料を納付すると65歳から上記の満額の老齢基礎年金が受け取れます。20歳から大学を卒業する22歳まで学生納付特例を利用すると、

上記の年金から約6万円少なくなり、年金額は約72万円になります。この金額が老齢基礎年金として生涯もらえる金額になります。65歳から老齢基礎年金を受取始めた場合、85歳までの20年で、約120万円の差になります。

学生ではないが、失業等により国民年金保険料を納付できない時はどうすれば良い?

全額免除や一部免除制度があります。

参考WEBページ https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/seido-shikumi.files/06-01.pdf

(日本年金機構 国民年金保険料の納付が困難な方へ)

本人、配偶者、世帯主の前年所得などの条件により、保険料納付が免除又は一部免除される場合があります。また、免除、一部免除の場合も全額納めた場合と比べて、受け取る年金額が少なくなります。(免除、一部免除の場合は、学生納付特例制度とは異なり、一部支給されます)免除、一部免除期間は、受給資格期間には含まれます。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響で納付困難な方

本人申告の所得見込額を用いた簡易な手続き(臨時特例措置)により国民年金保険料の納付免除が可能になる場合があります。免除、一部免除を受ける場合は、手続き必要です。

保険料の納付が困難になったときは、放置せずに「すぐに」役所または年金事務所に相談に行きましょう。

追納制度を利用する

学生納付特例、保険料免除・一部免除を利用した場合、将来受け取る保険料が少なくなります。それを補うためには、10年以内であれば、後から納める追納制度を利用出来ます。

免除期間の翌年度から3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料に一定額が加算されますので注意が必要です。

何も手続きをせず、保険料を支払っていない「未納」の場合は、追納制度を利用することはできません。未納している保険料の納付の時効は2年となっており、2年以内に支払えば年金額に反映されます。

年金保険料を払わないとどうなるの?

保険料支払や学生納付特例制度の申請を忘れていた等年金を払っていない場合は、万が一、病気やケガで障害が残ったときに年金の受取が出来ない可能性があります。

スキーに行ってケガをした、自分の不注意で自動車事故を起こした等、身体に障害が残った場合、障害の状態により年金を受給する事が出来ますが、年金が未納だと受け取ることができない場合があります。

保険料が未納のまま放置し続けると、強制徴収により被保険者や連帯納付義務者である世帯主または配偶者の財産が差し押さえられる場合もあります。納付期限翌日から延滞金が課される場合もあります。納付出来ない場合でも、免除・一部免除、学生納付特例の手続きを取るようにしましょう。 学生の場合、一人暮らしをしていても住民票を移動させていないと実家に年金のお知らせが届きます。それを知らず手続きせず未納になっていた・・という場合もあります。20歳になったら、年金について必ず確認しましょう。

執筆:サポート会員 小島邦代(FP、キャリアコンサルタント)